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『Album Review』-【One Chance / Ain't No Room For Talkin'】-


Album Review



one chance 


One Chance : Ain't No Room For Talkin'


"ボーカルグループ不振"
ここ数年、この言葉を聞くようになってから、「あのグループが活動休止」「結局お蔵入りに・・・」なんて言葉も並行して聞くようになり、一向に回復の兆しが見えない昨今のボーカルグループ事情。
それが、音楽業界自体のディプレッションが原因なのか、ボーカルグループそのもののに価値を見いだせない、レーベルが原因なのかは不確かな部分もありますが(グループだと一人分の分け前が減るので、ソロとして活動を再開するアーティストも多々)、確実に90年代のボーカルグループ全盛期「Boyz Ⅱ Men」や「112」,「Le Jit」はたまた「Jodeci」まで、数多くの逸材的グループが活躍した頃と比べると、その規模は縮小を辿る一方です。
と言っても、2000年代前半~中頃は、上記のボーカルグループに加え、フレッシュなボーカルグループも多々活動していましたよね。
今ではそのほとんどが「解散」「活動休止」という名目でソロに転向している場合が多いですが、例えば「B2K」,「Pretty Ricky」,「Day26」なんかは一世を風靡したボーカルグループだと個人的に思っています。
さらに近年でも、「Brutha(解散)」や、昨年EPをリリースした「Hamilton Park」等、実力あるボーカルグループは多々存在するのですが、このアルバムのライナーノーツでも語られているように、ボーカルグループ"復権"までは、程遠い道のり、そして時代になってきているのだと感じています。
90年代の全盛期頃から活動を続け、コンスタントにアルバムをリリースをできているのは、「Jagged Edge」や「Boyz Ⅱ Men」くらいなのではないですかね。
ここに名前を挙げてないだけで、アルバムリリース前にお蔵入り・・・なんてグループも多々いましたし。

そんな中、幸運にもアルバムリリースの"チャンス"を掴んだボーカルグループがここに一つ。
「Usher」が初主演を務めた映画『In The Mix』のサントラに無名の新人ながら、『Could This Be Love』 『That's My Word』の2曲が収録されたことで、各業界から注目を浴びるようになった、ボーカルグループ"One Chance"
この2曲が、実質的な彼らのデビュー曲になるのですが、That's My WordのMVを見てもらえればわかるようにこの時のメンバーは5人。
その後メンバーの一人が抜けてから、「Rob Brent」,「Jon Gordon」,「Michael Gordon」,「Courtney Vantrease」の4人で、現在まで活動しています。(Gordon姓名の二人は兄弟)

当時、上記の2曲をリリースするに至って、「Usher」がJ Records傘下に設立したUS Recordsと契約していた彼らですが、翌2006年にリリース予定だったアルバム『Private』はお蔵入りに・・・。
その理由としてまず考えられるのが、このアルバムのリード曲としてシングルリリースされた『Look At Her feat.Fabo』のR&Bチャート53位止まりが原因でしょうか。
個人的には、当時の業界の流行をしっかり汲み取ったサウスチューンになっていたと感じますが、"シングルが売れなければアルバムは出さない"。それがメジャーレーベルの伝統的な(言い方が悪いですが)行事になっているので仕方ないことなのかなと思います。
その後、2008年に一部プロモ盤が出回ったシングル『U Can't feat.Young Joc』が、前作よりもさらに下落してチャート73位に。そこから、自然とレーベル解雇になってしまったようです。

ここまで見ると、ボーカルグループとしての生命を閉ざされた気もしますが、彼らに再び"チャンス"は巡ってきます。

『Look At Her feat.Fabo』でアトランタのアーティストと交流を持つようになった彼らは、2009年に「T-Pain」率いる"Nappy Boy Entertaiment"と電撃契約。
『Sexin'On You』他、多くのMVが公開され、そのまま初のMixTapeアルバム『Ain't No Room For Talkin'』を昨年発表しました。
現在は残念ながら、このレーベルとも契約は解除しているみたいですが、このMixTapeのタイトルからもお解りのように、今回リリースされた彼らのアルバムとほぼ同じ楽曲が収録されています。(日本盤ボーナストラックあり)
ですので、今作の制作陣は「T-Pain」そして、Nappy Boyに所属する各々のクリエーターにより手掛けられています。
それ故に、「T-Pain」サウンドたるエッセンスが今作のアルバム全体の基盤となっているわけですが、さすがオートチューンの"先駆者"「T-Pain」 彼らの歌声がどのようにすれば映えるか解ってらっしゃいます。
そして、何より彼らの魅力は、洗練された"コーラスワーク"でしょう。今作で言うならば、12曲目の『Rock Bottom』あたりですかね。これは大物二人も惚れるはずです。
何よりファンとしては、MixTapeの発表も嬉しかったのですが、やはりオフィシャルでCDがリリースされるということは、僕達ファンにとっても彼らにとっても衝撃的な出来事ではなかったのでしょうか。



これは最近知った事なのですが、彼らがボーカルグループとして活動開始したのが、2001年。
それから、10年以上もの間ボーカルグループとしてのキャリアを積み、夢の一つであろうアルバムリリースを成し遂げることができたのですよね。
勿論、このアルバムをリリース至って仕掛け人となった西崎信太郎氏、そしてP-Vineの方々の熱い思いが、アルバムリリース繋がったと思います。しかし、決してぶれない信念を持つことこそ、"あらゆる可能性"そして、"チャンス"を掴むことができるの最大の武器だと、今作のアルバムを通して感じることができました。
そんな彼らの「思い」「集大成」がこのアルバムに詰まっていますし、このアルバムを機に再びたくさんの「ボーカルグループ」が活躍できることを切に願っています。



1: Intro
2: No Name
3: You're the One feat. Young Cash
4: Me And You
5: Sexin' On You
6: Xtacy feat. T-Pain
7: Skit 1
8: Rain
9: Encore
10: Cowabunga
11: Skit 2
12: Rock Bottom
13: Echo
14. Everything
15: Outro
16: Cowabunga (Electro Remix)
17: Guardian Angel
18: This Ain't
19: No Reggie

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2. No Name

アルバム冒頭を飾るのは、美しいピアノの旋律をそのまま生かしつつも、ここぞとばかりに魅せてくれるファルセットがたまらない『No Name』
サビで奏でられる落ち着いたコーラスワークは、さずが実力派というところでしょうか。
この"美メロ感" 癖になります。



3. You're the One feat. Young Cash

ラッパー「Young Cash」を迎えたミッドチューン。(Young Cashは曲頭以外に、どのヴァ―スでも歌っていない気がしますが)
曲調はかなりコミカルなのですが、歌詞そのものはストレートなラブソングになっています。
また、サビもキャッチーでおススメです。



5. Sexin' On You



彼らのNappy Boyから復活作で、デジタルシングルとしてリリースされていた大人気曲『Sexin' On You』
言わずもがな、その理由は明確で、この曲のタイトルからもお察しの通り、かなり官能的なR&Bソングに。
一言で言えば"Baby Making Music"ですね。
「本来のR&Bはこうでなくては」と長年のR%Bファンの方も唸ること間違いなしの楽曲になっているかと思います。
今作は歌詞、対訳も記載されているのですが、やはり前述に挙げたようなパープル色漂う歌詞が何よりも醍醐味ですね。それ故に、彼らの歌声が放つ色気っぷりには感服です。



8. Rain

個人的に、Rainというタイトルとくれば、今まで素晴らしい楽曲達に出会えてこれたので、今曲もそれなりの期待を抱きつつ拝聴。
近年のアーバンR&Bをしっかり意識した、メロディアスなトラックに絡む滑らかなハーモニーが印象的。
このタイトルにハズレなしです。



9. Encore

かなり熱いヴォ―カル節が光る今曲『Encore』
サウンドこそ現行らしい感じですが、煌びやかなバックコーラスがオブラートに包んでくれていて、なんとも心地が良いです。




10. Cowabunga



このアルバム一番の、サウスフレイヴァをエッセンスに加えた『Cowabunga』
Nappy Boyさらにはこのレーベルを率いる「T-Pain」からの影響もかなり伺える楽曲で、ドライブ時に流してみても、映えるかもしれませんね。



12. Rock Bottom



前述のアーティスト紹介時に挙げた、サントラ「In The Mix」に収録されている『Could This Be Love』からの古巣のファンという方には是非聴いて頂きたい今曲。
僕も、「One Chance」のCDデビューはずっと待ち望んでいた一人なので、今作のアルバムの中でも一番好きな楽曲です。
失恋ソングですので、4人のハーモニーの中のロンリネスな歌声が特に際立ち、よりセンシティブな表現ができているかと思います。
こういった曲に限って相対的にみると、やはりオーガニックな曲調がぴったりだということで、そこもしっかり抑えてくれています。



13. Echo



サビのリフレインが印象的な今曲『Echo』
少し悲しげなトラックそのままに、エモーショナル歌声が響き渡るレイドバックチューンに仕上がっています。



14. Everything

イントロからオートチューンを大いに活用した楽曲なのですが、それが逆に新鮮でどこか「クリスマスソング」のような感じに。(僕だけでしょうか)
正直言うと、オートチューンに対してあまり肯定的ではないのですが、さすが「T-Pain」率いるNappy Boy。
プロデューサーは「T-Pain」ではなかったのにはびっくりしましたが・・・。
「BabyBoi」というプロデューサーが良い仕事をしていますね。



17. Guardian Angel

日本独占盤に収録されているボーナストラック4曲の中から、この曲をピックアップ。
まるで、映画のサウンドのような異国風なトラックに、のめり込みそうになるシリアスな楽曲になっています。





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